「漢字読本〜1年生〜」

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■一年生■※読めなくていい漢字にはルビをふって使用 ※一年生の漢字が全て入っています。
「権兵衛の村」
 むかしむかし、あるところに右の目玉が金色に光る大きな大きな犬がいました。その目は、どんなに遠くのものでも見ることが出来ると言われていました。その犬は、小さな子供が大好きで、いたずらも大好きな犬でした。名前は権兵衛といいました。権兵衛は、毎日、月が沈み日が昇ると直ぐに天空を見上げ、大きな口を開けて大きな声でウオ〜ッと一声吠えました。それから、森や林を駆け抜けて、その村で一番高い山へ行って木に登りました。権兵衛は、木登りも出来る不思議な犬でした。木の上からは、田んぼや川や竹やぶなどが見えました 。いつもは、この木の上で昼寝をしながら、いたずらを考がえる権兵衛でしたが、その日は違いました。草むらの中から、虫の王様と呼ばれている左足の青い円形の虫が出て来たり、土の中の石が貝殻のように白く光ったり、夕方にしか咲かないはずの花が朝早くから咲いていたりと、いつもとは違っていたのです。権兵衛は、とても嫌な感 じがして、どうしても眠れませんでした。そのうちに、権兵衛の耳に糸のように細い 雨が降って来ました。そして、パチパチと 何かが燃える音が聞こえて来ました。ハッとして山の中腹を見てみると、何と真っ赤な火 が町の小学校に迫っているではありませんか。大変だ、と思う間もなく、その火は、一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、九つ、十と数を増やして小学校に迫って行き ます。大きな大きな山火事だったのです。権兵衛は、木の上から、この山火事のことを村の人 に大声で知らせようとしましたが、朝早いせ いか、村の人は、なかなか気づいてくれません。幸運にも、今日は、学校がお休みなので 先生も生徒も学校にはいません。でも、子供達の学校が燃えてしまったのでは大変です。権兵衛は力いっぱい吠え続けました。下に見 えていた火は山の上にも迫って来ていました。何百回、何千回と権兵衛は吠えました。村の人が、やっと気づいてくれました。消防車に乗って村の人がやって来ました。でも、山の道は火に邪魔されていて車では 通れません。そこで、権兵衛は消防車の代わりに村の人を乗せて何度も何度も火の所まで走って行ってあげました。男の人も女の人 も、村の人みんなで手伝って水を運びました。夕方になって、ようやく火事は消えました。権兵衛の活躍のお陰で、村の人は山火事を 消すことができたのです。村の人達は本当に権兵衛に感謝しました。そして、次の年のお正月に大きな文字で権兵衛の村と書いた立て札を村の入り口に立てました。(おわり)
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