第5話 いまここから、未来への航海
キーティングの情熱により、"自由"を心に掴んだ若者たちの翼は、
ニールの自殺を境に、再び籠の中に収まる生活を余儀なくされる。

ニールの家族のたっての要望で、その後徹底的に行われた厳しい調査は、あくまで名ばかりで、
「キーティングさえいなければ、ニールはおとなしく医者の道に進み、命を絶つこともなかった・・」
という親側の激しい怒りと、評判が落ちるのをなにより気にかけた学校側の思惑が相重なって、
校風の一定秩序に波風を立てていたことで元々疎ましく思われていたキーティングに、全ての
責任を負わせ、結果的には辞職へと陥れようと、最初から双方で企てられていたものだった。

「キーティングのせいにしとけって。
 どうせもうキーティングは救えないんだぜ?

 だが自分は救えるんだ。

 少しでも利口なら、
 君らも僕と同じことをするはずさ」

大人達の意向を敏感に察知した、"死せる詩人の会"のメンバーでもあるリチャード・キャメロンは、
退学処分になることを怖れ、我が身を守るために、キーティングにそそのかされ"死せる詩人の会"
を結成し、それが自堕落な行動を引き起こす原因となったことや、キーティングが教師という立場
を濫用し、両親の命令に反するものと承知のうえで、ニールの演劇への妄想を助長させたこと
などが、ニールを死に追いやった直接の原因である、という根も葉もない事実を密告してしまう。

それらの事柄に賛同して書類にサインするか、それとも退学処分か、道は2つに1つとの学校側の提示。

両親を呼び出され、大人達を目の前に、
気が怯んでしまった他のメンバーたち。

抵抗することも身動きとることさえもできず、
結局は強要されるままにサインをしてしまう。

そんななか、トッドだけは、その大きな圧力にも
屈せず、署名を最後まで頑なに拒んだ。

"先生のせいで僕らは変わってしまったわけじゃない。これがもともとの僕らだったんだ..."

立ち向かう「勇気」がなかったばかりに、"自由"を掴み損ねたニールの心の中の真実を、闇に葬るわけにはいかない。
そしてキーティングもトッドにとって特別な存在。"本当の自分"を引き出し認めて受け入れてくれた初めての大人。

「・・じゃあ、父さんは僕のこと気にかけてくれてた? けど、キーティング先生はいつも僕のことを気にかけてくれてたんだ・・
父さんは僕のことなんか考えてもくれない。それどころか邪魔に思ってた・・。サインはできないよ。だって真実と違うもの。
先生がニールに何かを指示したわけじゃない。心の底から本当に芝居が好きで、自分の意志でやってたんだ。夢だったんだ・・
サインなんか絶対するもんか!教育は先生の人生なんだ!ニールの夢と同じように、先生にとって教育は全てなんだ!」

「 まさかあの子が親に反抗するようになるとは・・・この学校に入れたのは間違いだったのかもしれませんな!」
「 あの年頃の少年は、きわめて影響を受けやすいものです。われわれが、ちゃんと目を覚まさせてあげますから・・・ 」

キーティングの辞職が決定し、新任が見つかるまでノーラン校長がトッドらのクラスの授業を受け持つことになる。
「詩は勉強するものではなく、心で感じるものだから・・」と、キーティングが破り捨てさせた記憶がまだ真新しい
"詩を理解する方法"について書かれた概論ページを読み上げるようノーラン校長が促していた丁度そのとき、
タイミングよく突然教室の後方の扉が開く。 残りの私物を取りに来たキーティングだった。

かつての、"死せる詩人の会"のメンバーたちは、みな自分たちの行動を恥じるあまり、視線を避けるように俯いた。
ただ1人、キャメロンだけは何事もなかったかのような顔つきで、悪びれた様子もなく、普段通りに勉学に勤しみ、
自殺したニールや退学処分になったチャーリーの面影を今だ残した教室で、自分の行った行動を誇示するかのように、
ノーラン校長が推奨するその"概論ページ"を、教室を横切っていくキーティングの目の前で堂々と読み上げてみせる。

キャメロンの朗読が続くなか、荷物の整理を終え、教室を去ろうと、出口に向かうキーティング。
去っていくキーティングを背中で感じながら、トッドは震える手を握り締めていた。
そして、キーティングが出口に差し掛かると同時に、心を奮い立たせ立ち上がる。

「キーティング先生!

 みんなサインをしたのは
 本心じゃないんです!

 みんな無理矢理に・・・
 本当です!信じてください!」

ノーラン校長の噛みつかんばかりの激しい怒りにも屈せず、なおも続けるトッドを心配するキーティング。
「分かってる。信じてるよ・・」と、トッドに近づこうとするが、ノーラン校長の激しい怒りはキーティングにも向けられる。
「出て行くんだ キーティング!・・・いいかトッド。諸君もだ。これ以上楯突くマネなどしたら即刻退学だからな!」

再びキーティングが背を向け、出口に足をかけたそのとき、トッドは心の奥底から"勇気"を振り絞り、
自分の机に片足をかける。 そして、一気にそのうえに立ち上がり、全身全霊、力の限り叫んだ!

「おお船長!わが船長よ!」

ノーラン校長がトッドめがけ、怒りをあらわに近づこうとしているその反対側で、
ノックスが同じように雄叫びをあげ、意を決して一気に机の上に飛び上がる。
ノーラン校長が慌ててノックスを振り返ると、生徒たちは雄叫びをあげながら、
次々と机のうえに一気にのぼりだした。誰かの考えではなく自分の考えで..
いままでとは違う自分らしい景色を、たった今、そう、ここから始めるために...

ノーラン校長は、生徒達を抑制することを忘れ、その場に立ち尽くし、
キーティングに対する生徒達の情熱に、ただただ圧倒されていた。

人は疑問のなかに生きる。
答えを見いだすべき疑問のなかを。
しかしそのためにはまず疑問がなければならない。
「疑問」を生きていくなかで、人は多くの真実を学ぶだろう。

                     レオ・バスカリア

真実は足がはみでる毛布だ...

広げても引っ張っても、僕たち誰一人をも覆ってくれない。
この世に生まれ堕ちた瞬間から、死してこの世を去るその日まで、
この真実という毛布は、嘆き叫ぶ僕らの顔しか隠せない。

 でも、僕は諦めない。

 僕らに足りない毛布は、
 内なる"自由"と
 ひるむことのない英雄なる"勇気"。

 たとえこの身は衰えていこうとも、
 英雄なるものの心は強く、意志は固く。

行こう友よ。 新しい世界を探すにはいまだ遅すぎはしない。
自由でいることの勇気を空高く頭上に掲げ、彼方へとこぎだそう。
未来に繋がるこの航海が、「今を生きる」ということなんだ。

おぉ船長!わが船長!

まばゆい情熱に溢れ、
生命がほとばしる、
あなたの意志を継ぎ、

たった今、そう、ここから、
自分を知るために、

僕の内なる彼方へと、
自分を探す旅にでる。

今はまだ、本当の自分が何者なのか、本当に何をしたいのか、行き先は分からない。
だが、目に映る一粒一粒の星の光を道しるべに、いつかは必ずたどり着くんだ。

未来に繋がる歴史を、今ここから描いていけば、いつかおのずと、光のようにたどりつけるはず。
この一粒の光をなぞって、未来に繋がる歴史を描いていけば、おのずと光は線となり伸びてゆく。
光の速さは無理だけど、おいかけておいこして、夢の在る場所にいつかきっとたどりつけるはず。

僕らの行き先に、羅針盤は必要ない。
この航路に、"心"があるかないか、それだけが問題だ。

目の前にある全てが夢へと向かう軌跡だと誰かが言っていた。

この世のなかに、"偶然"というものはひとつもなく、
すべては"必然"であり、無意味な物事などないという。

全ては必ず何かに繋がっていて、
夢に辿りついて振り返ったときに、
全ての点は1つの線で結ばれていたことに気づく。

その1つ1つの足跡すべてが夢へと近づく前兆であり、
1つでも欠けていたら、ここには至らなかったんだと。

ならば真実を見極めながら、まずは目の前の1つ1つ、残らず手探りでたどって行こう。

心に地図を描きながら、極から極を覆うこの暗闇のなか、
僕だけの輝ける場所を、探し求めて見いだすために。

行こう友よ。

無意味な物事で終わらせるか、
意味あるものへと繋げていくか、
全ては自分の手のなかに。

「他人」と「過去」は変えられない。
だが、「自分」と「未来」を変えるのに
いまだ遅すぎはしない!

真実を葬ろうとする力に、
決して屈することなく、
たった今、そう、ここから始めるんだ。

  真実が報われる本当の世界を探し求め、自分を信じ、勇気をかざし、
             誰にも汚されることのない僕らだけの輝ける未来へと漕ぎだそう。

行こう友よ。 たった今、そう、ここから。

それぞれの新しい世界を見つけるために
自分を照らす輝ける港に帰り着くために

僕らは"今"を手探りで、ただ がむしゃらに漕いでいくんだ。

答えは自分のなかに..
未来はこの手のなかに..

〜 SEIZE THE DAY 〜

精一杯 運命に抵抗
正解・不正解の判断 
自分だけに許された権利

sailing day 舵を取れ
夜明けを待たないで 帆を張った 
愚かなドリーマー

目を開いたその先に見える確かな眩しさが
空になったハートに 理由を注ぐ

精一杯 存在の証明
過ちも 間違いも 
自分だけに価値のある財宝

sailing day 舵を取れ
哀しみも絶望も拾っていく 
呆れたビリーヴァー

誰もが皆 それぞれの船を出す
それぞれの見た眩しさが灯台なんだ

そうだよ まだ 僕は僕の魂を持ってる
たった一秒 生きる為に
いつだって命懸け 当たり前だ

精一杯 存在の証明
敗北も 後悔も 
自分だけに意味のある財宝

sailing day 舵を取れ
冒険の日々全て 拾っていく 
呆れたビリーヴァー

精一杯 運命に抵抗
決して消えはしない 
僕だけを照らし出す灯台

sailing day 舵を取れ
嵐の中 嬉しそうに 帆を張った 
愚かなドリーマー

誰もがビリーヴァー
永遠のドリーマー
        藤原基央 <BUMP OF CHICKEN>

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<生きる力と勉強する理由> T.Itoyama著書/新刊「絶対学力」

教育とは何だろうか。なぜ君達は教育を受けているのだろうか。
「教育とは何か」と聞かれて、困った顔をする保護者や教師がいる。
それでは教育される方はたまったもんじゃあない。

中学生に向かって「とにかくやれ」では通らない。
12歳を過ぎると頭は大人と同じなんです。
大人と同じ理屈で考えることが出来るんです。

だから、誤魔化してはいけない。
君達も誤魔化されてはいけない。

「教育とは、人生を楽しむことが出来る力を付けてあげること」
言い換えると「本当にやりたいことを見つけ出すことが出来る力を付けてあげること」
これが教育。君達は自分が本当にやりたいことを見つけるために勉強している
だから、勉強は自分のために一生懸命にしなければ自分が損をする。

「本当にしたいこと」を見つける。実はコレが大変なことなんだ。
残念ながら、一生かかっても見つけられない人だってたくさんいる。

ただし、見つけさえすれば人生が一気に楽しくなる。苦労が苦労でなくなる。
「本当にしたいこと」を見つけた瞬間から全てのことが、そのことを中心に回り始める。
他のことは関係なくなるし気にならなくなる。

恋愛と同じだね。本当に好きな人が分かれば他の人はどうでもよくなって、目に入らなくなるのと同じ。
でも、ここで注意して欲しいことがある。「好きな人ができた」と「好きな人が分かった」では全く違うということ。
どうして自分があの人を好きなのかがハッキリ分かったという瞬間がある。
この瞬間があると人はその人を一生好きでいられる。

よい教育はよい財産になります。決して減ることのない素晴らしい財産になります。
しかし、間違ってはいけない。学歴が財産なのではなく、教育が財産なのです。
なぜなら「教育とは人生を楽しむことが出来る力を付けてあげること」だから。
「本当にやりたいことを見つけ出すことが出来る力を付けてあげること」だからです。

人類が築き上げてきた財産、それは「人生を楽しむ力」です。
保護者を含めて教育者はこの人類の財産を子ども達に伝えていくことが一つの役目なのです。
人生を楽しむ力を持たない人は成人していないのです。未発達なのです。

やろうと思えばたいていのことは出来る。
ただ、本当にやろうと思うには「自分のやりたいことが本当に分かっていること」が必要になります。
ところが、それを見つけるのが難しい。だって世の中には見たこともない世界がいっぱいある。
見なきゃ自分がどう反応するかも分からない。だ・か・ら、学校で色んな世界を見るわけさ。

もちろん全てじゃない。それでも、数学の世界、国語の世界、英語の世界、美術の世界など色々ある。
科目ってのは色んな世界への入口。つまり学校ってのは色んな世界を覗き見しながら頭と体の体操をするところ。
特に中学までの学習内容は運動で言うと、本番前の準備体操と同じ。誰にでも出来て誰にでも必要なもの。
キチンとやらないと怪我をする。そして、準備体操を十分にしないと実力は発揮できない。

つまり、今、キチンと教育を受けないと本当に好きなことは見つけられないって事。
中学の勉強に分からないなんてのはない。絶対に分かる。
難しくて分からない問題なんて一つもない。
もしもあったらそれは勉強方法が間違ってるってこと。

人生ってね、好きなことばかりやって暮らせるんだよ、やろうと思えば。みんなもそうだよ。誰でも出来る。
ただし、それには自分が作った自分だけの判断基準を持ってなくちゃあダメなんだ。
だから勉強って大事なんだよ。自分だけの判断基準を作るには考える力がいるからね。

自分の判断基準をもたないとどうなるか。

例えばテレビゲームで「ここで1回ボタンを押す」「ここで3回ボタンを押す」「ここで右に曲がる」「ここでジャンプする」
と全てのことを隣の人が言う通りにゲームをしなくてはいけないとしたら、どうだろうか。楽しいだろうか。楽しいわけがない。

でも、自分の判断基準を持っていないってのは、こういうこと。
自分で決める力がないってのはこんなにつまらないものなんだよ。
しかも、やってるのはゲームじゃなくて人生そのもの。

もしも、自分の判断基準を作ることが出来なければ、
自分の人生を他人の判断で生きていくことになる

さっきのテレビゲームみたいになる。こんなにつまらないことはない。

義務教育が終わったら直ぐに君たち一人一人の人生が始まる。
高校生になろうがなるまいが、もう君の人生はスタートする。
だから、中学を卒業したらどうするかは自分で決めなくてはいけない。
その時には自信と責任を持って決めて欲しい。なぜなら、自分の人生の最初の決断だからだ。

「高校進学は自分の希望と責任でする」これが大事。