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読書感想ブログ】<抜粋>
幼児・低学年教育に関する著書を中心にご紹介しています。 お子さんを持つ方、お子さんに関わるお仕事をされている方にお一人でも多く読んで頂けることを願っています。 もうひとつのブログ「日々の思い」も覗いて頂けると嬉しいです。

2005年11月18日 (金)
「絶対学力」 T.Itoyama著

本日2冊目は教室を立ち上げて間もない頃に読み、大いに共感することの多かった本のご紹介。
どんぐり先生については他にも著書やサイトなどをご紹介したいと思っています。お楽しみに。
絶対学力―「9歳の壁」をどう突破していくか? 
T.Itoyama著 文春ネスコ
評価 ★★★★★
帯に書かれていること。
「9歳の壁」を乗り越えられないと高学年で学力不振に!!」
「塾の講師に指導方法を教える立場にあったカリスマ講師が提案する
「考える力」の育て方!」
私が幼児・低学年教育に拘っている理由のひとつに、「9歳の壁」という考え方があります。最近ではドラゴン桜などでもそれに関して(直接9歳と言っていた訳ではありませんが)の話題が取り上げられていたかと思います。
幼児はある時期まで抽象的思考ができない。また、幼児期に間違った学習を強いると後々に大きく悪影響が出る。
一般には「頭が柔らかい」などと表現されることが多いように思いますが、確かに幼児の頭は柔軟です。何でも吸収していきます。だからこそ、間違った教育を受け続けると、それに順応してしまう怖さがあるのです。
どんぐり先生は第1章で、子供のある症状を「満点落ちこぼれ現象」と呼んでおられます。それは何かというと、低学年期には満点ばかりをとっていた子が高学年になると明白な原因がないのに急に「分からない」と言い出す状態をさしており、その症状をきたす原因として、低学年期に深い学習(←深く考える学習の意味だと思われます)を怠り、表面的理解しかしてこなかったことを挙げておられます。
そして、低学年期に速さを追及して反復学習させることの恐ろしさについても具体的に述べておられます。(このことに関しては、プリント反復学習を経たお子さんに対して違和感を感じておられる塾の先生方は多いようですが。)
速さを追求すると考えなくなる。それは大人でも確かにそうです。例えばすごいスピードで電卓をたたいている時にはひとつひとつの数字の意味など考えていません。どうすれば簡単に計算できるかな?などという工夫が入り込む余地も全くありません。
それと同じことを頭の柔らかい幼児・低学年期にさせることの怖さをこの本を読むことで一人でも多くの大人の方に感じて頂きたいと思っています。
また、やってはいけない家庭学習ワースト10を挙げておられたり、子育てや家庭学習のヒント、中学受験対策などについても述べておられます。
私はずっと公立の学校で、中学受験には縁がありませんでしたが、週に4日も5日もお弁当まで持って塾に行き、夜遅く電車で帰宅している小学生の姿を見るたびに違和感を覚えていました。
高校受験でさえそこまで大変な思いをした覚えがない私としては、灘や開成、ラサールなどといった超難関校はともかく、その他の私立中学に入るためにそこまでの勉強が本当に必要なのだろうかという思いがずっと心に引っかかっていたのです。
ですが、この本を読んでかなりすっきりしました。私が感じていた違和感はある意味正しかったのだと。ごく一部のお子さんを除いて、多くのお子さんたちが塾の作戦(?)に乗せられ、する必要のないところまでの講習や授業を取らされているのだと。
もちろんこれは私の感じ方でしかありませんので、中学受験はそんなに甘くないのよ!というご意見もおありでしょう。それでも、そんな方にこそ一度はお読み頂きたい1冊ではないかと思っています。

2005年11月19日 (土)
「新・絶対学力」 T.Itoyama著

昨日に続き、どんぐり先生の著書をご紹介します。
「新・絶対学力―視考力で子供は伸びる」
T.Itoyama著 文春ネスコ
評価 ★★★★☆
「絶対学力」の続編としておよそ1年後に出版されました。
副題にある通り、こちらでは見ること(イメージすること)によって学力を身につける方法が具体的に紹介されています。
本の帯には「子供を伸ばす9歳から中学受験までの勉強法!」と書かれているのですが、色々な絵や図、実際に著者が使用している教材などを具体的に挙げながら説明をしておられます。
また、終章である第六章では、「視考力が身につく問題集・指導例」としてかなりの数の問題や指導例を挙げておられます。
著書のまえがきの中で印象深い言葉を引用します。(以下青字は引用)
子供たちは「お絵描き」が大好きです。ところが、勉強となるとなかなか自分から絵図を描こうとはしません。算数の文章問題でも絵図さえ描ければひと目で分かるのに、何も描かずに「分からない」「難しい」「習っていない」と言いながら、脈絡のない数字を足したり、引いたり、掛けたり、割ったりし始めます。そして文脈に関係なく、「これ割り算?」などと言い出します。
これは異常なことです。
持っている力が封じ込められているのです。つまり、彼らは絵図を使わないのではなく、絵図の使い方を教えてもらっていないのです。(中略)
世の中には「読み・書き・計算を徹底すれば、考える力は自然に育つ」と思い込んでいる人は少なくありません。
本当にそうでしょうか。私には、読み・書き・計算で考える力が育ってほしいという「希望」あるいは「願望」としか思えません。なぜなら、何万人という子供たちと接するうちに、読み・書き・計算が優秀であるにもかかわらず、考える力が育っていない子が圧倒的に多いという事実に気づいたからです。
どんぐり先生は直接多くのお子さんと触れ合いながら、幼いうちから読み・書き・計算を単純に繰り返してきた子達の悲しい姿を数多く見てこられたようです。
そして、そうならないためには先生が「視考力」と呼んでいる「見る力」「イメージする力」をつけることが不可欠だと述べておられます。
これを読んでくださっている保護者の方の中には、お子さんが既に引用部分に挙げたような状態になっているという方もいらっしゃるかもしれません。それ以外にも、塾などで指導をされておられ、同じようなやりとりに記憶がある方も多いのではないかと思います。
ですが、それは取り返せると先生は述べておられます。そのために効果的な学習もふんだんに紹介しておられますので、現在、幼児・低学年のお子さんにプリント反復学習をさせておられる保護者の方や、既に上述のような症状が出ているお子さんをお持ちの保護者の方には是非ともお読み頂きたい1冊だと思います。

2006年1月 6日 (金)
「子育てと教育の大原則」T.Itoyama著

ようやく、どんぐり先生の最新の著書のご紹介です。
ブログを立ち上げて間もない頃に買ったのですが、なかなかこの本を読むところまで辿り着かず、また、辿り着いたら今度は内容がとても濃いので、なかなか読み終わらずで、ご紹介がすっかり遅くなりました。
「子育てと教育の大原則」 T.Itoyama著 エクスナレッジ
評価 ★★★★☆
どんぐり先生は、どんぐり倶楽部のサイトを拝読しても感じますが、長い文章を書かれることが苦にならない方なのではないかと思っています。(先生、違っていたらすみません。。。)
ですので、この本も内容が濃い上に文章がびっちりしっかり入っていて(本によっては行間が広くてあっという間に読み終わるものもありますよね。)、個人的には2冊に分けて書かれてもよかったのでは?と思うようなものでした。
かなり盛り沢山の内容で、「絶対学力」や「続・絶対学力」と比較すると、より育児を含めた「子どもの教育」に重点を置いて書かれているように感じました。(タイトル的にもそうですね。)
内容はご紹介したいことが盛り沢山なのですが、きりがないので、中でもこの本で印象に特に残ったところをご紹介します。(以下青字部分引用)

まず、第1章では「熱しやすく冷めやすい」というのは子供時代の基本的で大事な特性です。と書かれており、子どもに対して、一度やり始めたら最後までしなさいというのは「多様な思考モデル」の獲得を邪魔する浅はかな考えだと述べておられます。
また、同章で「12才までのテレビは制限しましょう」という項で書かれていることの中から、そんなこと意識もしていなかったなというのが、子どもにニュースを見せるということは最も注意しなければならないと書かれていたことです。
その理由として、「内容を知らされていないことが多いので見せてはいけないものを制御できない」「記憶に残りやすい視覚情報が中心なので影響を受けやすい」「非日常的なこと・異常な様子が多い」などを挙げておられ、以下のように述べておられます。
残虐なシーンを見せながら「こんなことをしてはいけません」と言っても、残っているのは「残虐なシーン」そのものであり「視覚情報を肯定する」という人間の本能は「してもいいんだ」という感覚を育ててしまうのです。
どんぐり先生によると、人は視覚から受けた情報は正しいものと認識しがちだそうです。だとすれば、暴力シーンや殺人のシーンなど、テレビであれゲームであれ、子どもに見せるのは本当に危険極まりないことだと思います。恐らく事実なのだと思いますので、これまで意識していなかったということにぞっとします。

また、第3章では「反応が速いことと物覚えがいいことには注意しましょう」という項でこんなことも書かれています。
幼児・児童期の「反応が速い」は「頭がいい」ではありませんし、「物覚えがいい」は「記憶力が優れている」でもありません。
どちらも、思考モデル(視覚イメージの再現・操作)作成のための一時的な現象です。ところが、多くの人がこのことに気づかずに「今がチャンス」とばかりに「この時期に、できるだけ速くさせよう」「この時期に、できるだけ多量に覚えさせよう」として一生に一度しかない貴重な時間を潰してしまっています。考える力の素を作るべき時期に考えない力を強化しています。これでは、天才(子供はみんな普通に天才)といえども永久に才能は発揮できません。

幼児は丸暗記が得意だということは、教室を初めてから色々な本を読み、知りました。しかし、それはある時期特有のものだということも書かれていました。ただ、どんぐり先生によると、その時期のその能力は人が人間として生きるために必要な力の獲得に使われるべきものであって、目的を間違って使うと、体だけ大人になって頭の中は子供のままという「子供大人」になってしまう危険があると言っておられます。また、この著書の中に書かれていたことは、私がこれまで漠然と感じていた中学受験に対する違和感や、小さい間にしっかり遊んでいる子の方がある程度の時期がくれば伸びるように感じていたことをより確信に近づけてくれました。私はそこを目指していないので「中学受験」についての内容はご紹介していませんが、本書にはそれに関しても望ましい取り組み方などが詳しく書かれていますし、家庭学習で気をつけるべきことなども具体的に沢山書かれています。12歳までのお子さんをお持ちの方、その年齢のお子さんに関わっておられる方には一度お読み頂きたい1冊です。(読まれるのであれば、お子さんが小さいほどいいと思います。)
投稿者 willseeds 時刻 19時00分 in 心と体, 教育, 書籍・雑誌, 育児