<中学生のための教育講演会より抜粋:T.Itoyama>

 今、テレビで「ワンピースーOne Pieceー」というアニメを放送しています。その冒頭で次のような言葉が流れます。「世界が、そうだ、自由を求め選ぶべき世界が目の前に広々と横たわっている。終わらぬ夢がお前たちの導き手なら、越えてゆけ、おのが信念の旗のもとに」
 これは、まさに「自分の価値観を信じて生きろ」ということを伝えている言葉です。そして、なぜこのアニメが人を惹きつけるのか、それは登場人物が、この言葉のように自分の判断で行動しているからです。ルフィー、ゾロ、ナミ、ウソップ、サンジ、チョッパー、みんなが自分の判断で行動しているから面白いんです。これが、今日のポイントです。
 まずは教育の話です。教育とは何だろうか。なぜ君達は教育を受けているのだろうか。「教育とは何か」と聞かれて、困った顔をする保護者や教師がいる。それでは教育される方はたまったもんじゃあない。中学生に向かって「とにかくやれ」では通らない。12歳を過ぎると頭は大人と同じなんです。大人と同じ理屈で考えることが出来るんです。だから、誤魔化してはいけない。君達も誤魔化されてはいけない。
「教育とは、人生を楽しむことが出来る力を付けてあげること」言い換えると「本当にやりたいことを見つけ出すことが出来る力を付けてあげること」これが教育。君達は自分が本当にやりたいことを見つけるために勉強している。だから、勉強は自分のために一生懸命にしなければ自分が損をする。
 「本当にしたいこと」を見つける。実はコレが大変なことなんだ。残念ながら、一生かかっても見つけられない人だってたくさんいる。ただし、見つけさえすれば人生が一気に楽しくなる。苦労が苦労でなくなる。「本当にしたいこと」を見つけた瞬間から全てのことが、そのことを中心に回り始める。他のことは関係なくなるし気にならなくなる。恋愛と同じだね。
 本当に好きな人が分かれば他の人はどうでもよくなって、目に入らなくなるのと同じ。
 でも、ここで注意して欲しいことがある。「好きな人ができた」と「好きな人が分かった」では全く違うということ。どうして自分があの人を好きなのかがハッキリ分かったという瞬間がある。この瞬間があると人はその人を一生好きでいられる。
 よい教育はよい財産になります。決して減ることのない素晴らしい財産になります。しかし、間違ってはいけない。学歴が財産なのではなく、教育が財産なのです。なぜなら「教育とは人生を楽しむことが出来る力を付けてあげること」だから。「本当にやりたいことを見つけ出すことが出来る力を付けてあげること」だからです。人類が築き上げてきた財産、それは「人生を楽しむ力」です。保護者を含めて教育者はこの人類の財産を子ども達に伝えていくことが一つの役目なのです。人生を楽しむ力を持たない人は成人していないのです。未発達なのです。
 やろうと思えばたいていのことは出来る。ただ、本当にやろうと思うには「自分のやりたいことが本当に分かっていること」が必要になります。ところが、それを見つけるのが難しい。だって世の中には見たこともない世界がいっぱいある。見なきゃ自分がどう反応するかも分からない。だ・か・ら、学校で色んな世界を見るわけさ。もちろん全てじゃない。それでも、数学の世界、国語の世界、英語の世界、美術の世界など色々ある。科目ってのは色んな世界への入口。つまり学校ってのは色んな世界を覗き見しながら頭と体の体操をするところ。特に中学までの学習内容は運動で言うと、本番前の準備体操と同じ。誰にでも出来て誰にでも必要なもの。キチンとやらないと怪我をする。そして、準備体操を十分にしないと実力は発揮できない。つまり、今、キチンと教育を受けないと本当に好きなことは見つけられないって事。中学の勉強に分からないなんてのはない。絶対に分かる。難しくて分からない問題なんて一つもない。もしもあったらそれは勉強方法が間違ってるってこと。
 人生ってね、好きなことばかりやって暮らせるんだよ、やろうと思えば。みんなもそうだよ。誰でも出来る。ただし、それには自分が作った自分だけの判断基準を持ってなくちゃあダメなんだ。だから勉強って大事なんだよ。自分だけの判断基準を作るには考える力がいるからね。
 自分の判断基準をもたないとどうなるか。例えばテレビゲームで「ここで1回ボタンを押す」「ここで3回ボタンを押す」「ここで右に曲がる」「ここでジャンプする」と全てのことを隣の人が言う通りにゲームをしなくてはいけないとしたら、どうだろうか。楽しいだろうか。楽しいわけがない。でも、自分の判断基準を持っていないってのは、こういうこと。自分で決める力がないってのはこんなにつまらないものなんだよ。しかも、やってるのはゲームじゃなくて人生そのもの。もしも、自分の判断基準を作ることが出来なければ、自分の人生を他人の判断で生きていくことになる。さっきのテレビゲームみたいになる。こんなにつまらないことはない。
 義務教育が終わったら直ぐに君たち一人一人の人生が始まる。高校生になろうがなるまいが、もう君の人生はスタートする。だから、中学を卒業したらどうするかは自分で決めなくてはいけない。その時には自信と責任を持って決めて欲しい。なぜなら、自分の人生の最初の決断だからだ。「高校進学は自分の希望と責任でする」これが大事。行きたくない人は行ってはいけない。行くのなら、それだけの努力をしなければいけない。努力もしないで高校に行くと言うことは働かないのに給料をくれと言っていることと同じです。中学の3年間は高校進学を目指す人にとっては高校受験の資格を得るための3年間です。ですから、ここで資格を取れなかったら受験はできません。してはいけないし、させてはいけないのです。また、高校進学を希望しないのであれば、この3年間は社会での進路を決める3年間になります。とりあえず高校に行ってというのはおかしな考えです。そんな時間はありません。進学しない人はコンピューターを使って情報検索・情報処理の勉強と自分のホームページを卒業までに作ることに専念すべきです。インターネットは革命をもたらしました。君達は革命のまっただ中に生きているのです。今がインターネットを使いこなすための勉強をする絶好のチャンスなんです。3年間コンピューターの勉強を必死でやってごらん。それだけでも仕事ができるようになる。いずれにしても、学生の本分は学業なんです。つまり学生にとっては勉強が仕事。
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<生きる力と勉強する理由>「絶対学力(T.Itoyama)」より

 「どうして勉強しなきゃいけないの?」「数学が何の役に立つんですか?」「英語なんて使わないのにどうして覚えなきゃいけないんですか?」等と言われて困った経験はありませんか。勉強をする理由は「勉強は人間(成人)になるための頭の体操だから」です。そして「教育とは人生を楽しむことが出来る力を育てること」です。他の理由は全てオマケです。
 教育界では「生きる力」という言葉が流行しています。しかし「生きる力」と言われても、どうもピンとこない。そこで「生き抜く力」と言ってみると少しは分かりやすいでしょう。つまり、世界のどこにいても生き抜くことができる力のことを「生きる力」と言うんです。日本は今まで海と言葉に守られて来ました。ですが、これからは海も言葉も守ってはくれません。仕事と同じように、時代が進むとともに距離の壁も言葉の壁もなくなる(ボーダーレスになる)からです。そんな時に一体何が自分を守ってくれるのでしょう。それは自分しかいません。今も昔も自分を守るのは自分しかいないんです。いつまでも親がいるわけではありません。いつも隣に親友がいてくれるわけではありません。いつでもどこでも一緒にいるのは自分だけなんです。では、どうしたら自分で自分を守れるのでしょう。何が力になるのでしょう。それは「自分を信じる力」があるかどうかにかかっています。自分を信じることを自信と言います。では、自分に自信があるとはどういうことでしょう。自信があるとは、色んな価値観の中でも自分の価値観を見失わずに生きていけるということです。誰に何と言われても自分の判断を信じて生きていけるということです。自分が作り出した価値観・判断基準を持てる力のことを「生きる力」と呼ぶのです。そして、この力をつけるには、どうしても「考える力」が必要になります。だから人は勉強するんです。色んな考え方が出来るように勉強するんです。間違ってはいけない。頭はへんてこりんな計算をするためにあるのではありません。頭は自分の判断基準を作るためにあるのです。そして、これがあると人生は一気に楽しくなります。だから「生きる力」=「人生を楽しむことが出来る力」となるのです。これが「教育とは人生を楽しむことが出来る力を育てること」と言える理由です。
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