総索引】どんぐり倶楽部では▼どうして脳の活性化は×?で既に言及していることですが、
     脳研究の教授が書かれたものですので、あらためて紹介させて頂きます。
     ※下記引用は著者(
藤田一郎教授)に許可を頂いております。

『脳ブームの迷信』藤田一郎著/飛鳥新社刊...2009年11月24日発行
※藤田一郎...1956年広島県生まれ東京育ち。2002年より大阪大学大学院生命機能研究科教授。理学博士。
東京大学理学部および東京大学大学院を卒 業後、国立共同研究機構生理学研究所、カリフォルニア工科大学、理化学研究所を経て、
94年より大阪大学医学部教授。2002年より現職。
 略歴
 1979年3月  東京大学理学部生物学科動物学専門課程卒業
 1979年4月〜1981年3月  東京大学大学院修士課程(理学系、動物学専攻)
 1981年4月〜1984年3月  東京大学大学院博士課程(理学系、動物学専攻)
 1984年4月〜1985年3月  岡崎国立共同研究機構生理学研究所、特別研究員
 1985年4月〜1989年5月  岡崎国立共同研究機構生理学研究所、助手
 1987年1月〜1989年5月  カリフォルニア工科大学生物学教室、客員研究員
 1989年6月〜1992年1月  理科学研究所フロンティア研究システム、フロンティア研究員
 1992年2月〜1994年3月  新技術事業団さきがけ研究21「大脳側頭葉皮質視覚領野の機能構築」研究
 1994年4月〜1999年3月  大阪大学医学部認知脳科学(小野薬品)寄附講座、教授
 1998年4月〜2001年3月  大阪大学大学院基礎工学研究科生物工学分野脳科学講座、教授
 (1998年4月〜1999年3月は医学部教授を併任)
 2002年4月〜現在  大阪大学大学院生命機能研究科 脳神経工学講座認知脳科学研究室、教授
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<引用>全索引はコチラ
<p.16_3-6>
●科学的根拠のない情報が信憑性のあるものとして流布され、受け取られていき、今や、
教育や介護などの現場をも侵しつつある
さらには、名だたる企業が
科学的根拠のない商品を、科学的根拠があるかのように装って大量に販売する。
これが私の見る「脳ブーム」の実態です。
<p.23_7-p.24_8>
●川島さんは脳の血流量の増加がなぜ起こったかについて、その要因を絞り込まずに結論に至っていますが、これでは計算を解くことによるものなのか、
急いで 何かに取り組むことによる血流量の増加なのか、わかりません。したがって、この実験の成果としては、
簡単な計算問題を速くといているときに(原因は不明だ が←Itoyama注)血流量が増加増加したということがわかっただけにすぎません。
 同様に川島さんは『脳を鍛える大人のDSトレーニング』のホームページでも、「『前頭前野』をどんどん使って鍛えることは、頭が良くなることに通じる」 とし、
計算を解くことや音読によって、脳の広範囲にわたる、特に前頭葉での血流上昇が見られたことから、脳の機能に変化を引き起こし、練習したドリルの計 算能力などだけでなく、
コミュニケーション能力や記憶を含む他の能力までもが改善されることを示唆しています。しかし、私は
川島さんが掲げる機能的MRIによる計測結果からは、
脳の活動部位と血流量の増減以外の結論を導き出せない
のではないかと考えます。
 川島さんは血流量の増加から「脳を鍛えるには、簡単な計算を速く解くことが有効である」と結論づけていますが、
なぜそう結論できるのか、
論理的説明がなされていませんし、脳の機能向上を示すデータは明示されていないので、これは唐突な結論
だと言わざるを得ません。
ここで言われる「脳を鍛える」という意味も曖昧で、具体的に何を意味するのか明確に記されていません。
<p.25_12-p.26_12>
●『脳を鍛える大人のドリル2』をはじめ、「脳トレ」関連の商品には、「脳が活性化する」、「脳が活発に働く」、「脳の働きを高める」という言葉が宣伝の キャッチコピーをはじめ、
商品解説などに出てきます。皆さんは、これらの言葉を聞いてどのような意味だと解釈したでしょうか?ほとんどの人は、「脳が元気 になる」、「脳の機能が向上する」、「脳が若返る」
というような意味としてとらえたのではないでしょうか。
 しかし、脳機能イメージング法(MRIやPETなど)を用いた研究において、「活性化した」というのは、ある特定の部位で神経細胞が活動した結果、脳の血流量が増加したことを意味し、
そのような状態を指して「ああ、大脳皮質運動野が活性化しているね」などと言うのです。
研究の現場では、決して「脳の性能や機能が高まる」
という意味で使われる言葉ではありません。

 そのような誤解を防ぐために、脳科学の現場では通常、「活性化した」と言うよりも「賦活(ふかつ)した」という言葉を使います。また、「運動野が活性化 (賦活)した」
と脳部位を特定してこお言葉を使うことが普通で、専門家が「脳が活性化した」というような漠然とした使い方をすることはありません。
 <p.31_6-p.32_1>
●適切な対照実験がなされていないため、この実験からは計算や音読により野に効果が現れたのか、それとも実験過程におけるスタッフとのコミュニケーションで成績が上がったのか、
この全く異なる二つの解釈が成り立つわけです。
 川島さんはこの二通りの解釈が成り立つことをご存じで、
論文には「認知機能の上昇は、スタッフと学習者(筆者註・実験群)の間で
コミュニケーションを交わす機会が増えたことが理由であったかもしれない」と書いています。
 しかし、ドリル本やゲームソフトが世に出るときには、この保留はなぜか消えてしまったのです。

 ここまで見てきた二つの商品をはじめ、現段階では「脳トレ」商品の効果を実証する科学的根拠は著しく薄弱です。私には、
「脳トレ」商品によって脳機能の
向上や維持を期待できるという根拠は見当たりません
でした。
 <p.31_6-p.32_1>
 『週刊朝日』(2007年11月16日号)に、「脳トレ」の科学的信憑性についての記事が掲載されています。
 その記事で
川 島さんは、「脳が働くという事実と、脳の機能が上がるというのは別の問題です。働いた結果、
良くなるかどうかは、違う次元の話です」と先に私が指摘したこ とと同様のことを述べていますが、この発言は
『脳を鍛える大人の計算ドリル』での川島さんの結論や、任天堂の『脳を鍛える大人のDSトレーニング』のホー ムページに謳われる
「脳を鍛えることで記憶力やコミュニケーション能力が向上する」とは異なる見解です。

(しまりすさん[実は小児科医]も
HPで指摘していましたね。コッチがツッコミは鋭いです←Itoyama注)
 こうした任天堂のホームページに掲載される文言に対して、川島さんは「ざっと見た感じでは、うまいことつないでいるなとは思いますね。ただ、
どちらかというとグレーだけど、ブラックじゃない。
そこから先は民間の企業(利益優先主義←Itoyama注)活動ですから口を出せません」と述べています。
 一方、任天堂は『週刊朝日』(同号)の取材に対し、『脳を鍛える大人のDSトレーニング』は「もともと川島教授が、あらかじめ脳が活性化することを科学 的に検証され、
書籍で広く知らしめておられた内容のみを本ソフトに採用し、さらに、開発過程で、DS上で川島教授が脳を活性化させることを認められたアプ リケーションのみを含んだソフトですので、
発売後に改めて検証を行う必要はないと考えます」と全面的に川島さんの検証を信用したうえで発売していると主張 しています。
<参考1>
脳の活性化?「たかじんのそこまで言って委員会」
委員会動画
大阪大学大学院認知脳科学研究室の HP
ニセ科学フォーラムで行った
講演
HPのリンク先
リンク先
<参考2>
http://homepage.mac.com/donguriclub/your_brain_is_in_danger.html