【いかに反復させないで暗記できるように工夫するか】算数は
●暗記物にしてもいかに反復させないで暗記できるように工夫するかが大事なのに、
 いかに反復させるかを工夫している人がいる。
●12才までの学習で「徹底反復」というのは、やってはいけない学習方法です。
 12才以降は何でも結構ですが、以前はいけません。
●漢字でさえも人間の認識過程を利用した「マクロ-ミクロ-マクロ認識定着」→「IF法」が重要なんです。
 「マクロ:意味:漢字読本-ミクロ:体感:塗り絵筆順帳-マクロ:バランス:全手本漢字練習」
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●では、漢字ドリルです。
1.入力のための「読み」については制限を設けない。
2.出力のための「書き」については制限を設ける。
※書けることがスゴイことだと思わせてはいけないと考えるからです。
3.「読み」と「書き」は異なる学習方法を採用する。
※学習効果を考えると自然に異なる学習方法になりました。
4.「読み」の中心は「スラスラ発音できること」ではなく「直ぐに意味が分かること」と考えてスラスラと発音できることに固執しない。
※意味は話の流れの中で理解することが最も自然で簡単であることを活用する。
5.「書き」の中心は「正確なこと」ではなく「バランスをとれること」と考えて「止めハネ」に固執しない。
※「筆順」は絶対的なものではない(書体で異なる場合もあるし、硬筆・毛筆で異なる場合もある)ので、意識しなくても自然に身に付くように工夫する。
 以上のことを、具体的な形にしたものが『漢字読本』『漢字筆順帳』『全手本漢字練習帳』です。『漢字読本』とは、年間配当漢字を一つの物語の中に全て織 り込んだ一つの物語です。基本的には漢字の「読み・意味の確認」に使いますが、確認テストとしても使えますし、音読用の副読本としても使えます。
 漢字学習で突然書かせる人がいますが、手順としては良くありません。漢字学習の手順
は1.物語での読み聞かせ(漢字読本:発音の入力→文中で意味の確認:発音と視覚イメージのリンク:漢字の意味を知る)2.自分での読み(漢字読本:記号 の音声化:音→視覚イメージ再現を意識する)3.大きな文字での体感(塗り絵漢字筆順帳:細部を感じる)4.文字のバランスを目と手で確かめる(全手本漢 字練習帳)5.「漢字読本」の書き用で読み・意味・書きの確認の順番です。漢字読本の様々な使い方(音読用・読み用・書き用)は「絶対学力(文春ネス コ)」で紹介していますので、ここでは一年生の「本文」を紹介します。

『漢字読本』■一年生■「権兵衛の村」
 むかしむかし、あるところに右の目玉が金色に光る大きな大きな犬がいました。その目は、どんなに遠くのものでも見ることが出来ると言われていました。そ の犬は、小さな子供が大好きで、いたずらも大好きな犬でした。名前は権兵衛といいました。権兵衛は、毎日、月が沈み日が昇ると直ぐに天空を見上げ、大きな 口を開けて大きな声でウオ〜っと一声吠えました。それから、森や林を駆け抜けて、その村で一番高い山へ行って木に登りました。権兵衛は、木登りも出来る不 思議な犬でした。木の上からは、田んぼや川や竹やぶなどが見えました 。いつもは、この木の上で昼寝をしながら、いたずらを考える権兵衛でしたが、その日は違いました。草むらの中から、虫の王様と呼ばれている左足の青い円形 の虫が出て来たり、土の中の石が貝殻のように白く光ったり、夕方にしか咲かないはずの花が朝早くから咲いていたりと、いつもとは違っていたのです。権兵衛 は、とても嫌な感 じがして、どうしても眠れませんでした。そのうちに、権兵衛の耳に糸のように細い 雨が降って来ました。そして、パチパチと 何かが燃える音が聞こえて来ました。ハッとして山の中腹を見てみると、何と真っ赤な火 が町の小学校に迫っているではありませんか。大変だ、と思う間もなく、その火は、一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、九つ、十と数を増やし て小学校に迫って行き ます。大きな大きな山火事だったのです。権兵衛は、木の上から、この山火事のことを村の人 に大声で知らせようとしましたが、朝早いせ いか、村の人は、なかなか気づいてくれません。幸運にも、今日は、学校がお休みなので 先生も生徒も学校にはいません。でも、子供達の学校が燃えてしまったのでは大変です。権兵衛は力いっぱい吠え続けました。下に見 えていた火は山の上にも迫って来ていました。何百回、何千回と権兵衛は吠えました。村の人が、やっと気づいてくれました。消防車に乗って村の人がやって来 ました。でも、山の道は火に邪魔されていて車では 通れません。そこで、権兵衛は消防車の代わりに村の人を乗せて何度も何度も火の所まで走って行ってあげました。男の人も女の人 も、村の人みんなで手伝って水を運びました。夕方になって、ようやく火事は消えました。権兵衛の活躍のお陰で、村の人は山火事を 消すことができたのです。村の人達は本当に権兵衛に感謝しました。そして、次の年のお正月に大きな文字で権兵衛の村と書いた立て札を村の入り口に立てまし た。(おわり)
 この一つの物語で一年生の漢字+αの読みができます。こうすると、一学年分を一日で修得することも可能です。すると、教科書は一日で全て読めることにな ります。音読の範囲を限定する必要は無くなります。また、全学年分を学年に拘らずに使用すれば音読の練習を兼ねて4年生くらいで全学年分の漢字を無理なく 修得できます。

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『漢字筆順帳』は一回の練習で筆順を覚えてしまう「塗り絵形式」の筆順練習帳です。見れば分かりますので説明は省きます。漢字筆順帳で部首だけを上から黒 塗りすると部首が浮かび上がりますので自然に部首を意識できます。筆順を歌って覚える方法も知ってはいますが小学生に1006字分の1006曲を覚えさせ る必要はありませんし、大きく書くだけで殆ど覚えますので不要です。また、正確さを要求されるのならば(普通は不要)間違いやすい文字の間違いやすい部分 だけを意識すれば、より効果的です。

【補足:書き順の表記について】
●分割された書き順を使わない…分割書き順は、子供達に多くの無駄な時間と負担をかける最も不便な方法です。見た目はいいのですが、実際に書く時には役に 立ちません。また、止めハネを言葉で書くのは手を止めさせるだけでなく注意力を散漫にさせますので止めハネは全て記号で表しておく必要があります。つま り、書き順は一マスの中で瞬時に確認できるように全てのお手本に数字と矢印記号を使って表示すべきなのです。こうすることで、毎回書き順を目することがで き、無理なく無駄なく正しい書き順を自然に身に付けることができるのです。分割された書き順は、辞書でさえも20画なのに8字しか示されていないもの(例 えば「競」)もあります。これは省略ではなく酷い手抜きです。

『全手本漢字練習帳』は漢字をバランス良く書けるようにする練習帳です。ただし、練習は1回〜2回に限定します。次の点に注意して作られています。
●「なぞり書き」を使わない…なぞり書きは一見良さそうですが、なぞり書きをしている時に目はお手本を見ていません。つまり、線に沿って書いているだけ で、漢字の練習にはなっていないのです。また、全体を意識しにくい方法です(バランスを考えないでも書ける)ので漢字練習には不向きな方法です。
●お手本を上に書かない…お手本は常に真横(左)に見えるものでないと非常に見づらいものです。「見づらい」と「見なくなる」のは当然のことで、ドリルを 出す方が工夫して解消すべきことの一つです。見づらい理由は、漢字のボトムラインが移動してしまうからです。手本を横にしておくと練習する漢字のボトムラ インはお手本と同じラインを使えます。これが、お手本は必ず横に置いておかなければいけない理由です。縦書きの文章だからといって縦に(上に)お手本を書 くのは大間違いです。
● 練習欄の横には全てお手本を書いておく…同じ漢字でも常にお手本が横にあるように全ての練習欄の横にお手本を書いておくことが基本中の基本です。お手本が 一つで複数の練習欄を使うと、練習欄は練習する漢字の分お手本から離れていきますので、お手本を見ないで書くようになってしまうからです。
●練習欄とお手本欄は同じ大きさにする…練習する字の大きさとお手本の字の大きさが違っているとバランスが分かりづらいので歪な字になってしまいます。漢字はバランスが美しさを作り出します。そのバランスを自然に体感するためには同じ大きさのお手本が必要不可欠なのです。
●同じ漢字の練習を何回も続けない…全ての練習欄の横にお手本を書いておけば複数回の練習も悪くはありませんが、それでも編だけ先に書いたりする子が出て きたり、量が多いこと自体が嫌になり漢字を味わう感覚が無くなります。そこで、同じ漢字の練習は多くても2回までとします。
●漢字練習欄の大きさは1.5〜3cm前後…漢字練習欄の大きさは細部を感じ取れて、尚かつ瞬時に全体を一目で認識できる大きさである必要があります。低学年では一辺が3センチ前後、高学年でも一辺が1.5センチ前後が理想的です。

◆このような考察から「一文字書くときには、顔は不動で視線は横移 動(お手本と練習欄は横並び)、手(指関節)は縦移動が自然であり、細部と全体を体感できる大きさでお手本と等しい升目を使い、毎回全ての書き順を一瞬で 確認できて飽きない漢字練習帳」が必要だと分かります。ただし、実際に書くと分かりますが書き順とバランスは同時に修得するよりも別々に身に付ける方が効 果的です。そこで『漢字筆順帳』と『全手本漢字練習帳』
に分けました。

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次に教室での漢字の覚え方です。漢字も計算と同様に(読解も同じですが)出来る限り反復しないことが大事です。通常は1回しか練習はさせません。「させない」「してはいけない」とすることが大事なのです。
【漢字指導:教室バージョン】
 漢字テストは毎日します。ただし、1文字だけです。テスト用の練習はしてはいけないことにしておきます。授業中の1回書きと間違い直し(宿題)の1回だ けです。テストで間違った文字はそのまま保管しておいて夏休みの個別課題にします。こうすることで、先生は一切時間をかけないで生徒一人一人の弱点補強の 宿題を出すことが簡単に出来ます。
 1日1回1分で1漢字を覚える「漢字授業例」です。年間200日として6年間で1200文字。小学校で習う漢字は1006字なので復習や確認テストも可能です。
「はい、今日の漢字いきま〜す」
1.黒板いっぱいに大きく漢字一文字(例えば「初」)を筆順を数えながら書く
「いち、に〜い、さん。しい、ご。ろく〜、しち。」
※生徒達は既に目に焼き付けるように見ている。
※生徒達は声を出してはいけません。
2.漢字の説明を言葉だけでする。書かない。「初めて何かをするときの初めて」「最初のショ」「初夏のショ。夏の初めの方ね」「初心忘るべからずなんてのもあるね」
※ここで説明のために使ったことまで覚えさせようとしてはいけません。
3.生徒達に空中書き取りをさせる。「はい。一緒に」「いち、に〜い、さん。しい、ご。ろく〜、しち。」
※みんなで空中に指を走らせながら筆順を数える。
※生徒達は漢字の視覚イメージの再現に意識を向ける。
4.頭の中で視覚イメージをなぞる。「はい、目を閉じて。はい、一緒に。」「いち、に〜い、さん。しい、ご。ろく〜、しち。」
※先生は黒板の漢字を消しながら唱和する。
※頭や指を動かしながら漢字の視覚イメージを意識する子供達。
5.ノートの左ページいっぱいに一文字書く。「はい、じゃあ書きますよ。鉛筆を持って下さい。ゆっくり、一緒に。」「いち、に〜い、さん。しい、ご。ろく〜、しち。」
※この時は既に手本は子供達の頭の中だけにある。
6.「はい、ノートを閉じて下さい」
7.間違い漢字の宿題一文字「はい。帰ったら「お手本」と比べてあっていたら赤鉛筆で○。間違っていたら間違っていた部分を赤鉛筆で書き直してから、「お手本」を見ながら右のページに大きく一文字だけ練習してきて下さい」
8.終わります。
※覚えることの基本は視覚イメージ再現を意識してすることなのです。もちろん鮮明に再現することは出来ません。特訓すれば出来ますが、出来るようになった ら異常ですので異常は目指さないで下さい。また、「書けば覚える」なんてのも嘘です。書くときに頭が視覚イメージの再現をするので何度もすれば思い出せる ようになるだけです。ですから、最初から意識して再現練習をすれば何倍も簡単に楽に覚えられるのです。