総索引

◆絶対に進んではいけない小学校の未来

 私は二十数年前に大手塾の大失敗を目の当たりにしました。それは、進学率をあげようとして、
それまで小四からだった入塾を小三からにし、ついには小一からにしたことです。塾生は増えま
したが進学率は上がりませんでした。そして、低学年戦略は学力養成とは関係のない、単なる塾生
の囲い込み戦略となって今に至っています。
 次の書評は教育雑誌「いきいきニコラ」の馬場氏の書評です。重要な資料としての価値を持つ
書評だと思います。(抜粋)全文はhttp://www.os.rim.or.jp/~nicolas/9sainokabe.html
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■「9歳の壁」と子どもの学習 〜T.Itoyama著『絶対学力』から思うこと〜   2003/11/24
 「9歳の壁」というのがあるそうだ。そして、この壁を乗り越えられないと高学年になって学力
不振になるのだという。この本の著者・T.Itoyama氏は百マス計算の陰山氏の方法を批判して「三角
計算」という小学生向けの計算の本も出した。彼の主張は百マス計算ブームに危惧を抱いていた私
の関心を惹きつけた。その大要は納得のいくものであった。実際にこの本を計算の苦手な子にやら
せてみたが、百マス計算では得られなかった効果を確認することも出来た。
 ところで、Itoyama氏の言う「9歳の壁」というのはどういうものか。人は12歳までに抽象思考が
できるようになる自然なプログラムを持っているが、そのプログラムに逆らって幼少期に先行学習
やパターン学習をさせると、考える力が育たず具象思考から抽象思考に変化する「9歳の壁」を乗
り越えられなくなる。具体的には、暗記力と計算力で満点をとっていた子が高学年になると学力不
振に陥る。それは考えない習慣をつけさせ、マニュアル人間を作り出すからだというのだ。これは
今流行りの知的早期教育への警鐘でもあろう。
 これについては、私の若い頃の経験による傍証がある。ある進学塾で仕事をしていた時、その塾
は日の出の勢いで躍進をしていたが、もっと生徒を増やそうという方針で、それまで小学4年生か
ら通塾させていたものを、親の要望も受けて小学3年生から引き受けることにした。それで教育熱
心な(?)家庭の子弟が通い始めた。中学受験は早いほうがいいというわけだ。確かに熱心な子が
多く勉強の成果もあがった。ところが、数年経ち高学年になった頃から奇妙なことが明らかになっ
てきた。受験学年になるころにその子たちの成績の伸び悩みが見られるようになってきたのである。
そして、5年生や6年生なってから通塾し始めた子どもたちに追い抜かれることさえ起きてきた。
通塾を勧める関係上、父母には秘密であったが、塾内では半ば公然の認識であった。その後の受験
の結果はもはや推して知るべしであった。

なぜ、こういうことが起きたのか。通塾の弊害が明らかであった。一般には「塾慣れ」とか「塾疲れ」
とか言われたが、私はもっと別のところに原因があると思っていた。それは学校に通い、塾や習い
事に通うことに忙殺され、ひたすら理解し覚えることに1日の時間の大半が使われ、ほとんど自分
で考える実行する習慣を持つことなく来てしまったことの結果ではないかと考えていた。いくら優
れた水泳の指導書を読んでも実際に自分の体で会得しなければ水泳が出来るようにはならない。こ
のことを、Itoyama氏は『絶対学力』(本物の学力)の中でより体系的に明らかにしてくれている。
 Itoyama氏はまた、スキャモンの「発達曲線」の説を引用しながら、抽象思考をする前の幼少期におけ
る体験的学習の大切さを説いている。子どもの発達にはそれぞれ段階があり、それに即応する形の
教育は効果があるが、徒な先行学習は害にしかならないのだ。
 Itoyama氏は、「教育とは、決して知識の切り売りではありません。もちろん問題の処理方法を教え
ることでもありません。教育は学力を育むことです」と言い、またこうも言っている。「教育とは
人生を楽しむことができる力を育てることです。一人一人が自分独自の判断基準を創り出すことが
できる力を育てることです。そして、学力とはこれらの様々なものの見方・考え方を理解できる力
のことです。」
 必ずしもItoyama説の全てに賛同できるというわけではないが、学校教育で「学力の低下」が叫ばれ、
「基礎基本の反復学習」が喧伝されている昨今、本書はそのような教育界の動向に現場から一石を
投ずることになるのは確かであろう。もし、子どもの教育を真剣に考えるなら、一度は目を通して
おきたい一冊である。

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 私は馬場氏とは面識がありません。ですが、大手塾の講師をしていた二十数年前に彼と同じ体験
をしています。ということは、この現象は全国的なものだったのだと思われます。
 そして今、一部の小学校が、「読み・書き・計算」を徹底反復して基礎学力を付けようとの名目
で、高速計算練習を軸とした、かつて大手塾が犯した大失敗と同じ道を突き進んでいるようです。
どうにか思いとどまって欲しいものです。
 私は、二十年も前に、小学校低学年で高速計算を徹底反復させられ、漢字や諺を大量に覚えさせ
られた子供たちの悲惨な結末を見てきたのです。漢字はイメージと連動させることで救いようがあ
りますが、高速計算だけは、どう頑張っても救いようがありません。どこまでいっても、やってい
るのは「10の補数と九九」の反復だけだからです。
 私の経験では、小学校低学年での高速計算練習ほど頭を固くするものは他にはありません。応用
のきかない発想の乏しい頭を作ってしまいます。最悪です。ですから、これだけは絶対にやらせて
はいけないのです。
 今、現役の小学校の先生が、かつて塾が試み、大失敗した低学年戦略を知らないのは仕方がない
でしょう。ですが、子供の反応をよく見れば分かるはずです。見せかけの見栄えのする力がいかに
有害なものかに早く気づいてもらいたいものです。
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加筆:2004.7/21
●ガラスの自信と危険な達成感を持たせた上に、表現力の養成という名目で幼稚な技を覚えさせ
 能力制限を才能開発と思っている人がいる。子供達の才能を見ようとしない似非教育者ですね。
●辞書引きも同じです。辞書は引き方さえ一度分かればオワリにします。無駄な時間を使いすぎます。
 そんな余裕はありません。思考モデル(思考回路)作成をすべき時期に知識の蓄積(最低の思考回路
 であるコピー回路の強化)と付箋を付けるという単純作業だけをして勉強をした気分になっているだけです。
 最も進むべきではない小学校の未来です。
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参考
<緊急:小6同級生殺害事件>→■■
<重要:発育の大原則>→★★★