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頭の健康診断はコチラ:年長〜小6:中学生は小5-6を使って下さい
*今の学習形式がお子さんに合っているかどうかも診断できます<診断表>*
※ご自由にお使い下さい<転載可:添削例の転載は御相談下さい>

※12才まで(特に9才までは)できても「(脳内進化の妨げになることは)しない」ことが大事なんです。
※中学受験などでどうしても多少の速さが必要な場合は小6の夏以降に短期間だけ練習されても結構です。十分に間に合います。
2種類のスモールステップ
<高速計算練習・マス計算をしている人はコチラもどうぞ

「絶対学力」より抜粋
■まえがき■
 私は、大手進学塾で中学受験・高校受験をする子供たちを数多く指導し、その後、塾講師の養成をしたりテキストを作ったりしてきました。現在は年長から中3までを指導しています。教育関係者で年長から中3までの子どもを一貫して指導している人は意外に少ないようです。そのなかで、教育の難しさも分かった反面、簡単な工夫で子どもは劇的に変わることも分かりました。また、伸びる子どもの共通点や伸びない子どもの共通点も知りました。そして、教育では言葉の育成と学習のタイミングがとても大切であることを実感しました。
 この本では「考える力を持った健全な子どもに育てる」ための工夫を紹介します。みなさんの子育てと家庭学習の参考になれば幸いです。
 体は動かさないと硬直してしまい動かせなくなります。頭も同じです。体操をしなければ動かなくなります。硬直化した(硬くなった)頭は、短絡的になり、情緒不安定になり、攻撃的になります。頭の体操とは考えることです。そして、人間(成人)になるには12歳までに様々な角度からものを見ること(抽象思考)ができるようになる必要があります。このことは様々な研究(スキャモン、ピアジェ等)でも一致した考えです。ですから、幼児期に先行学習やパターン学習(その中でも反射形成学習は最も悪い影響を及ぼす)などをしていると手痛いシッペ返しをもらってしまいます。幼児期にすべきことは、全ての時間を使って「ゆっくり、ジックリ、丁寧に」体験に裏付けされた豊かな言葉を習得し「考える力」を手に入れることです。この力が育たないと難関(9歳の壁)を突破することはできないのです。いくら計算が速くても、表面的な言葉を数多く知っていても無理なのです。
 また、時期を間違っている学習方法(特にスピード練習)は確実に柔軟性を失わせ、本来持っている力を低下させます。これは、スポーツや芸術活動でも同じです。そして、このことに気づかなければ無意味な際限のないスピード教育に落ち込んでしまいます。既に早期教育という名の才能を潰しかねない先行学習をさせているだけの能力開発教室・異常な数のパターン学習を強いる大手進学塾・パターン学習の中でも最悪の結果をもたらす反射式プリントを使う教室の洗礼を受けた人は多いことでしょう。保護者が、このようなことを子どものためだと思っていることは、子ども達にとっては不幸なことであり、全国的であることを考えると異常事態だと思います。同じ刺激でも、時期を間違えると、鍛えているつもりが痛めつけているという全く反対のことになるのです。特に、敏感な時期である成長途中(〜12歳)の脳にとっては耐え難いものになります。そして、取り返しのつかない不幸な結果をもたらします。
 子どもの成長は「待ったナシ」です。ですから、教育も「待ったナシ」です。学校で出来る部分は学校に強くお願いし、出来ない部分は家庭(校外)でやればいいのです。工夫次第で、教育は実に簡単に劇的に変えられます。保護者は、何が必要で何が不要なのかを知って、子どもに無意味な負担をかけることなく自然に豊かに成長できるような工夫をしなくてはいけません。
 子育ても家庭学習もキーワードは「言葉」です。
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●「考えない頭」は「考えられない頭」に成長する
 習慣には「する習慣」と「しない習慣」があります。その中でも、子ども達に一番付けてはいけない習慣が「考えない習慣」です。「考えない習慣」は「考えない頭」を作り、「考えない頭」は直ぐに「考えられない頭」に成長するからです。考えられない頭は、複雑なこと・抽象的なこと・手間のかかることを面倒で嫌なこと・不要なことと感じて拒否反応を起こします。行動としては落ち着きがない・短絡的・荒い言葉・突発的暴力・じっくり読めない取り組めない・工夫をしようとしない(言われたことしかしない)など様々な点で社会生活にも支障をきたします。もちろん学習では最悪の事態(考えることへの拒絶反応)を招きます。ところが驚いたことに、日本全国で時間とお金を使って「考えない習慣」をつけている保護者が大勢いらっしゃる様です。考えない習慣は自分で生きていく力を奪ってしまいます。要注意です。
 「考えない習慣」を付ける最も効果的な恐ろしい方法は反射式プリント(考えさせないプリント)を毎日させることです。反射式プリントとはどういうものかを知るために、反射式プリント作成上の注意点を紹介します。このプリントの仕組み・意図・指導者不要の理由が分かります。このプリントの目標は「考えさせないこと・考えなくてもできるようにすること」です。
■反射式プリント作成上の注意点□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
1.理由説明は書かずに手順だけを覚えられるようなプリントにする。
※理由は説明しないで手順だけを覚えさせる→「できれば分かる」と思わせる→指導者不要
2.手順通りにやれば必ずできて、考える余地を与えないような(考えさせない)数千段階にも
 細分化したプリントを用意する。
※分からないところを理解させるのではなく、プリントを変えることで対応できるように
 しておく→「誰にでも対応できる」と思わせる→指導者不要
3.新しい手順をドンドン覚えさせることで分からなくても学年を進めて行くことが出来るよう
 に、考えなければ解けない問題は入れない。
※分からなくても進度(学年)を進めることがいいことだと思わせる→指導者不要
4.英語はカタカナ式発音を書いておき、設問の前後に日本語でのヒントを書いておくことで、
 英語力ではなく国語力で答が出るようにしておく。
※もちろん文法説明はしない→「読んで訳せれば分かるようになる」と思わせる→指導者不要
 このようにすると、表面的には点数になるので反射式プリントの内容を吟味できない保護者
 からの苦情はきません。また、進度(学年)を進めることで(意味のない)優越感を持たせるこ
 とも出来ますので学力を誤魔化すには最適なプリントになります。さらに低学年で高学年の
 内容(ごく一部)を学習していると高学年の学力があるように錯覚する保護者が多いのですが、
 錯覚だということを教える義務はないので説明はしてくれません。
 確かに、こういう仕組みにすれば、指導者がいなくても子どもだけでできるプリントが作れますが、これは自学自習とは全く異なるものです。反射式プリントが付けてくれる習慣は、学力を付ける学習習慣とはかけ離れた、狙い通りの「考えない習慣」なのです。さらに「反射式プリント」は余分なスピードを付けてしまうので「考えない習慣」のうえに「考えさせない力」を付けてしまいます。ですから、特に学習習慣が付きやすい幼児期に「反射式プリント」を使うと大人になれない(抽象的な考えを出来ない)人間を育ててしまう恐れがあるのです。
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 今、私は中学受験を扱っていませんが、去年、特別に一人だけ指導した子がいます。国立の教育大学付属小の6年生で、付属中を目指している女の子でした。反射式プリントを使っている組織から出ている進度一覧表(理解度ではなく進度)に、この子が載っています。3学年先の学習をしていました。もちろん、とっくに反射式プリントの教室はやめてもらっていますが、当時彼女は全国(英語)で47,118名中373位(0.79%)・福岡で1,665名中13位(0.78%)に位置する子(算数・国語も同レベル)でした。プリントを見てみると、中3〜高1程度の内容を学習していました。反射式プリントの先生からは、できるからと言われて公立高校入試問題集まで渡されていましたが、さっぱり分かっていませんでした(本人談)。また、文法も殆ど教わっておらず、読解も単語を頼りに国語力で辻褄合わせをしているだけでした。プリントを見てみると、至る所に日本語でのヒントがあるので英語を知らなくても答えが出るように仕組んでありました。数学は機械的に処理するだけで応用が利かない状態になっており、文章問題はどこから手をつけたらいいのかさえ分からない状態で、絵を書く(文章を図式化する)という発想さえありませんでした。つまり、トップレベルにある子でも学習内容はチンプンカンプンで全く分かっていないということです。では、残り99.2%の子どもたちはどうなっているのでしょうか。考えただけでもゾッとします。また、理解度を表にするのではなくて進度のみを表にすることで「分かる」ではなく「できる(何枚プリントをしたか)」しか見えないようにしてあることにも嫌悪感を覚えました。これでは中学受験どころではありません。学校の7月の実力テストで算数は12点(20点満点なので100点満点に換算すると60点)でした。単純計算だけの得点です。順位は中〜中の下で、もちろん付属中には入れません。8月からは反射式プリントを完全に止めてもらい「分からん帳」▼付録・子ども達のノートギャラリー▲だけで受験対応学習を始めました。学校の実力テスト用の設定ではありませんので、当然のことなのですが11月でも算数10点(50点)でした。ところが、入試結果(1月)は次の通りでした。
※国語18(90点)※算数17(85点)※理科19(95点)※社会19(95点)←(100点換算)
 もちろん、トップクラスでの合格です。英語も反射式プリントを止めてゼロから学習し直しましたので、今ではトップクラスの理解力を示しています。彼女はもともと理解力はあったのに理解力を必要としない(考える必要のない)反射式プリントをしていたので発達を阻害されていたのです。
 生物であれば、どんな刺激にも多かれ少なかれ反応はします。そして、刺激に反応して成長もします。ですが、大切なのは、その成長しているものが良性のものなのか悪性のものなのかということです。癌細胞(考えさせない力)に栄養を与えていては健全な成長は望めません。お酒(計算問題)は適量であれば、薬(学力の素)の一つになりますが、過度に与えると毒となり体を蝕み、中毒にしてしまいます。アルコール漬け(計算漬け)にされた体(頭)が回復するのは容易なことではありません。
 私は今までに、反射式プリントだけをしていて応用力のある子に出会ったことは一度もありません。逆に、基礎力はあるのに驚くほど応用力がなく融通が利かない子どもには数多く会いました。このことに、私は危機感を持っています。機械的な反復思考(反射になると思考とさえも呼べない)は確実に子ども達の能力や才能を潰しているからです。
▼資料03・「考えない習慣」のチェック▲

●速くてはいけない理由※反射式プリントが作り出す人為的学習障害(ALD)
 速くていいのは「10の補数」と「九九」だけです。他の計算まで速くしてはいけません。速くて悪いことはないと思っている方が大勢いらっしゃいますが、速くてはいけないこともあるのです。特に幼児期の学習でスピードを付けることほど危険なことはありません。なぜなら、考える力を養成すべき時期には速さが一番の大敵となるからです。「作業と思考は反比例する」ということをご存知でしょうか。例えば、単純作業を速くしようとする場合を考えてみて下さい。単純作業を速くするには何も考えないで作業に没頭する必要があります。また、速い作業をしている時に何かを考えようとしても考えられません。つまり、速い作業は考えることを妨害する作用があるということです。大人でもそうですが、計算を速くしている時には、頭の中では思考が止まっています。高速計算は作業であって思考ではないからです。速い作業(高速計算)をしている時には頭の中では「考えるな」という指令が出ているということです。ですから、幼児期に一番注意しなければいけないのは高速学習なのです。高速学習は、条件反射的に処理することを要求していると同時に「考えるな」という指示を出しているのです。そこには「考える力」を生み出す要素は何もないということです。どんなに「あいうえお」を速く言えても本を理解することはできないではありませんか。全文をひらがなで書いてあれば小学1年生でも六法全書を簡単に読めるでしょうが内容は分からないでしょう。同じことです。速さを競ってはいけないのです。複雑な(高学年の)計算手順の高速反復は「考えさせない力」をさらに強大化させます。集中できているという人がいますが「考えない集中力」をどんなに付けても思考力は育ちません。集中力には「考える集中力」と「考えない集中力」があるのです。そして「考えない集中力」は頭を活性化させているのではなく、頭を疲労させているだけなのです。大きな勘違いです。
 ここに笑えない笑い話があります。「赤ちゃんが話し始めたとたんに、速いことがいいことだとばかりに、母親がその子を早口言葉教室に毎日連れて行って高速会話が出来るようにした。周りからはスゴイスゴイ速い速いと言われ、親子揃って有頂天になった。そのうちに、その子はゆっくり話すことが出来なくなり、言いたいことも聞きたいことも分からなくなって一言も話さなくなった。その時、もうお母さんはいなかった。彼は一人で頭の中だけで高速会話をして独りぼっちで一生を終えた」
 反射とは自動化するということです。自動化は放置すると固定化します。固定化すると何も受け付けなくなります。これを反射式プリントで考えると「単純計算の高速化(強制反復)→考えるなという指令の繰り返し(自動化による反射形成)→頭の硬直化→硬直化した頭の固定化→考えることを受け付けない拒絶化(人為的学習障害:ALD)→性格形成や人格形成に影響」となります。私はこれら一連の症状は現場を無視した教育政策と教育業界大手の営利主義が生み出した人為的学習障害(Artificial Learning Disabilities:ALD)だと思っています。
 この基本的な作用を頭においたうえで小学校低学年の学習方法を見直すと、高学年で伸びる子どもの育て方が自然に分かります。
 小学校低学年の時にしなければいけないことは「考える力」と「正しい家庭学習の習慣」を身につけることです。そして「考える力」を養成するためには、できるだけ条件反射の養成となる高速の機械的反復作業はしてはいけないのです。具体的には計算等でスピードを競うことは最もいけないことです。子ども達は、面白がってやろうとしますが、害になるばかりです。ここで、いかにスピード競争から思考訓練に移行させることが出来るかが教師の力量なのです。なぜならば、単純計算のスピードをつけることはいつでもできますが、ゆっくりジックリ丁寧に考えるという習慣はなかなかつかないからです。さらに、考える力のない子は小4からの抽象概念の世界を理解すること自体が難しくなりますので、全教科で落ちこぼれる可能性が出て来ます。教育者(保護者も含む)は、この移行期を常に意識して子ども達を指導しなければなりません。また「分かる」ことと「できる」こととは必ずしも一致しないことも子ども達に教えるべきです。手順をまねて答えを出しているだけの「できる」では、いつまでたっても「わかる」状態にはならないからです。それでも「分からなくてもいいから計算を速くさせたい」「子どもの能力を制限し思考を麻痺させ感情を不安定にし受け身の姿勢を作り豊かな発達を阻害してもいいから先行学習をさせたい」という人が果たして何人いるでしょうか。少なくとも、私は願い下げです。▼資料04・作業と思考は反比例するチェック▲
 頭は急がされると計算の意味を知ろうとはしません。考えるとしても、それは「どれだけ簡単に速く処理できるか」という本来の「考える」こととはかけ離れた動きをします。短絡的であることを求めるのです。子どもはこの状態を何十倍も敏感に受け取っています。そして、この状態は習慣を作り、性格を作っていく要素になるのです。ここに「何も考えない」→「何も考えられない」の悪循環の始まりがあります。

【2種類のスモールステップ】