※東亜日報(とうあにっぽう、トンアイルボ)は、大韓民国の日刊新聞(朝刊)である。日本統治時代の1920年4月1日に創刊。本社をソウル特別市鍾路区に置く。●いまや、韓国は危険なほどの「早期教育先進国」である。日本が軌道修正をしなければ、そのまま数十年後の日本の姿となる可能性が高い。
そこで、参考として、東亜日報・論説委員である鄭星姫(チョン・ソンヒ)氏のオピニオンを掲載させていただく。
起こっている現象を見ていただきたいと思う。
<引用開始>
●東亜日報:オピニオンより抜粋
先行学習禁止法
JUNE 06, 2012 06:50
§■先行学習とは、正規の学校教育課程より先に進む私教育プログラムをいう。先行学習は、自分で勉強する予習とは異なる。1学期の先行は基本で、概ね1年、ひどい場合は3年先行する。先行が行き過ぎ、中学生が中学課程を学ぶには小学生の学習塾に通わなければならないほどだ。一部の特別目的高校の校長は、入試説明会で、「同校に入学するには、高校の課程を終えて来てください」と露骨に要求し、先行学習を煽っている。
§■先行学習が最もひどい科目が数学だ。韓国科学創意財団が昨年7月に、小学校4年生以上から高校生までの生徒と父兄4715人を対象に、数学の私教育の実態を調査したところ、1学期以上先行する割合が、小学生は64.2%、中学生は56.3%、高校生は62.9%だった。3年以上先行するという回答も小学生3.47%、中学生2.09%にのぼった。実際に、学習塾が集中するソウル江南(カンナム)では、頭の小さな小学生が、中学生にも難しい図形の合同や三角関数、等比数列の問題を解いている姿を簡単に目にすることができる。
§■先行学習が果たして効果があるのだろうか。ソンパチョンサン数学院のチェ・ヨンソク院長は、最近開かれたあるセミナーで、「先行学習をした生徒の70~80%は、ちゃんと習得していない」と指摘した。習ったことを消化しないまま進度だけ先を行く生徒は、累積的に学習が欠如し、着実に正規の教育課程を受けた生徒よりも勉強ができない結果を生むという話だ。むろん皆がそうではない。上位5%の生徒は、先行学習の恩恵を受ける。しかし、多くは基礎を十分に固めることができないまま、先行学習に時間、金、体力を浪費している。
§■教育当局が教育課程を設計する際、発達段階にともなう脳の構造と学習力を考慮して作成する。それにもかかわらず、私の子どもだけ損をするのではないかと心配して、親は子どもを先行学習の学習塾に通わせる。学習塾も猛烈なマーケティングをしている。映画館で最前列の観客が立ち上がって映画を見れば、後列の観客もやむを得ず立ち上がって映画を見なければならない。皆が不便に映画を見る敗者になってしまう。「私教育の心配のない世の中」という市民団体が、先行学習禁止法の制定運動をしている。学習を法で禁止していいのかという反論も出ているが、このような法を求める声が出るほどだ。
鄭星姫(チョン・ソンヒ)論説委員 shchung@donga.com
楽しむ数学
MAY 31, 2012 07:44
§■16歳のインド系ドイツ少年、ショリヤ・ライ君が、数学界350年間の難題だった「ニュートンパズル」を、学校での課題週間のイベントとして簡単に解いた。ニュートンパズルとは、空中に投げ出されたボールの軌道を計算し、ボールが壁にどのような形でぶつかって跳ね返るのかを予測する量子力学問題であり、アイザック・ニュートンが出題した。これまでは最高物理学者たちがコンピュータに依存してのみ計算することができた。周辺から賛辞が殺到すると、少年は「問題を解くことができたのは、天真爛漫なためだ」と答えた。
§■天真爛漫なため、問題を解くことができたという言葉は、少年の考え方が固定観念の枠にとらわれていないことを示している。インドのコルカタで生まれた少年は数学が大好きだった。数学のレベルが相当なものだった父親から、6歳の時から数学を学び始めた。親子が夜遅くまで数学の問題と睨めっこをする様子は、想像するだけでもほほえましくてうらやましい。少年は、ドイツに来るまで、神秘的なインド数学の洗礼を受けたことだろう。インド人はアラビア数字「0」を発見するほど創意的かつ数学に強い民族だ。
§■韓国人は、小学校から高校までほぼ毎日のように数学を勉強するが、数学を楽しんでいるとはいえない。数学は、韓国の家庭が相当な金額の私教育費をつぎ込む科目だ。教育科学技術部が昨年、数学私教育の実態に関する調査を行った結果、小学生は学習誌を含め平均2.55件、中学生は1.86件、高校生は1.32件の数学私教育を受けていた。やりすぎと思われるほどの努力や投資にも関わらず、数学は「生徒時代の悪夢」であったり、「実の生活とは関係のない学問」と受け止められている。大半の児童生徒らは、数学に重要な入試科目の一つとしてアプローチし、入試に受かりさえすれば二度と振り返らない。
§■客観的な指標から見れば、韓国生徒らの数学成績はさほど悪くはない。経済協力開発機構(OECD)の国際学力評価で、高校1年生の数学レベルは評価対象となった65ヵ国の中で4位だった。最上位圏(上位5%)の成績では、上海(中国)、シンガポール、台湾、香港(中国)に次ぐ5位だ。潜在的数学エリートの競争力が落ちるのは、国家競争力のレベルでよい兆しとは言えない。競技大会の受賞実績を大学入試に反映することを禁じてから、数学オリンピアードへの関心が下がり、成績も大幅に下がっている。入試数学から脱し、楽しむ数学へと変わってこそ、真なる数学大国になることができるだろう。
鄭星姫(チョン・ソンヒ)論説委員
shchung@donga.com
<引用終了>
*全世界共通の現象である。パターン学習の行き着く先は決まっているということだ。