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<教育コラム003>〜視考力の芽生え〜

「お父さん、10より大きくなったらどうすると? 足使うと?」
「足ねえ。足でもいいやろうけど、ちゃんと曲がらんっちゃないと?」
「そうかな? ん〜(と、自分の足の指を折ったり伸ばしたりしてみて)、そうやね。よう曲がらんね。どうすると?」
「どうするとって。指は10本しかないしなぁ。そうだ、ハムちゃんに指使わせてもらったらどうかな」
「やだ」
「どうして」
「だって、噛むもん。ギーとか言って噛むんだよ。この前も、頭ナデナデしてあげようとしたら噛まれたもん。ココ。痛かった〜」
「お腹空いてたんやないと? よ〜くお願いすればいいっちゃないと? 手ぐらいかしてくれるやろ」
「やだ」
「じゃあ、お父さんから頼んであげようか?」
「ん〜。(しばらく考えて)あっ、ダメやん」
「何が?」
「だって、ハムちゃん5本ないもん。指」
「そうなの?」
「ないない」
「でも一応、頼んでみようか。ないよりあった方がいいっちゃないと?」
「ダメなの。10本ないと使えんと」
「そうなんだ。じゃあ、特別にお父さんの指5本だけ貸してやろうか?」
「何で5本なん?」
「右手はお仕事で使うから、左手だけ。どうかな」
「5本かぁ。5本じゃあねぇ」
「ダメかな」
「あ、いい。バイバイ」
「どうすると」
「絵を描くからいい」
「そう。できたら見せてね」
「うん、いいよ。(机に向かって色鉛筆を出しながら)ウサギさんの手にしよっかな。カメさんの手にしよっかな」
と、彼女は10より大きい数で困ることはなくなりました。
※ちなみに、ハムスターは前足の指が4本で後足の指が5本、ウサギは前足の指が5本で後足の指が4本です。たしかにウサギさんの方がいいみたいですが、カメさんはどうでしょうか。

 視考力の芽生えです。自分から絵を描いてみようとすることが視考力を使えるようになる第一歩なのです。重要なのは、「文字情報を見たときに、絵図にしてみれば分かりやすいから絵を描いてみよう」と、自然に思うようにしてあげることです。このように、切り換える力をつけてあげないと、方法を知っていても使えないことになります。だから、文章を読んで絵にするまでの過程がもっとも重要なのです。次に、その絵を使って「目で考えること」が重要なのです。どんなに優れた技を持っていても、いつ、どのように使って良いかを自分で判断できなくては宝の持ち腐れです。どんなにいい道具を持っていても、使うべき場所が分からなければ有効利用はできないのです。